虫祭峠(むしまつりとうげ)と薬湯【福栄~日野上】

虫祭峠 -あらすじ-

現在の虫祭峠

現在の虫祭峠(神福)

その昔、福栄に与一という孝行息子がいた。母親の病を治すため、大きな樽を背負い、矢戸の薬湯をもらいに出かけた。帰り道、鬼林山の峠にさしかかった時、鬼の近づいてくる大きな足音がする。与一はお地蔵さまに一心にお祈りをし、お地蔵さまに言われたとおりに、新しいわらじを頭にのせ、岩陰に隠れていた。鬼には与一が1匹のわらじ虫にしか見えず、事なきを得た。この出来事を庄屋さんに報告し、峠にお地蔵さまをまつることとなった。

実際に湧いていたという矢戸の薬湯とは…?

皮膚病に効く

硫黄泉で皮膚病に効くとされ、地元の人はもちろん、遠方からも汲みに来る人が大勢いた。泉源近くにふろ釜を据えて、その場で入る人もあった。

湯の谷

本来は“猪の谷”(いのたに)という地名であるが、冷泉とはいえ鉱泉が出ていたため、“湯の谷”と言うこともある。

鉱泉を引いて入浴

昭和50年代、高齢者生産活動センターの浴場にパイプをつなげ、鉱泉を引いた時期があった。温泉気分を味わいながら、1日の作業の疲れをとるのに重宝がられていた。しかし、岩の割れ目からしみ出る程度の湯量(1升びん1本ためるのに1日がかりとも)しかなく、沸かすのにも経費がかかり、長くは続かなかった。

<参考文献>
『いちいの里』『日野川の伝説』